2011年7月30日土曜日

スタートアップが今一番欲しい人は「デザイナー」という話

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(自分の解釈を断定的に言っている部分が多々あります。是非ご意見頂ければ!)

『今、インターネット・スタートアップ界隈では「デザイナー」が求められている』
ということをここ最近強く感じたので、
今言われている「デザイナー」という言葉と、
自分の今の気持ちをまとめる意味でもブログにしてみました。

【「デザイナー」?】

既にインターネット業界を含め
「デザイナー」という職業の人は多く存在します。
なのになぜ、今「デザイナー」という言葉が出てきたのでしょうか?

ここでいう「デザイナー」は、今までのデザイナーと意味が異なります。
特徴を挙げると

  1. 「デザイナー」はHTML・CSSが必須ではない
  2. 「デザイナー」がエンジニアに仕事をお願いする
  3. 「デザイナー」がデザインするものは「コト」

などです。

特にシリコンバレーを中心に言われている「デザイナー」は
  • 経営者の持った「ビジョン」を「目的」レベルにまで分解し
  • 「目的」を達成することに最適な「方法」を考え
  • 「方法」を達成するための「要素」を洗い出し
  • 「要素」の実現をエンジニアに依頼する
ということをします。

これはQuoraのデザイナーを行っている上杉さんも講義の中でお話されていましたし、
先日の「Startup Meets Design」でお話しされた坂井とわ子さんの会社でも
同様のことを行っているとおっしゃっていました。

今までのデザイナーは
  • 『ユーザー』の「ニーズ」を吸い上げた
  • 『プランナー』が「方法」を考え、「要素」に落とし込んだ物を
  • 『エンジニア』が作り、
  • それをきれいにする。
ということが大きかったように思います。

全てがそう、ということではありませんが、
このようになりがちなのではないでしょうか?
※ ここは少し想像も入っているので、実際はどうなのか?をご意見頂けると嬉しいです

今までは見た目をきれいにするためのデザインを
「HTML・CSS」で実現していましたが
これからは
世の中を知り、
ヒトを知り、
「ビジョン」を「要素」にまで落とし込む・・・
という今まで起業家がやっていたようなことをするため、
「HTML・CSS」が使う必要がありません。
(①)

今まではエンジニアから仕事を依頼されていましたが
これからはエンジニアに「仕事を依頼」します。
(②)

今までは「ビジュアル」をデザインしていれば
役割を果たせましたが、
これからは「コト」のデザインをする必要が出てきました。
(③)

「コト」とは2つの意味を持つと私は考えています。
1つは「プロダクト」
もう1つは「ユーザーエクスペリエンス(UX)」です。
このような「デザイナー」「プロダクトデザイナー」と呼ばれています。

【「プロダクト」「プロダクトデザイナー」「UX」?】

この3つの言葉もここ最近、バズワード的に言われています。

「プロダクト」とは、
企業(団体)が提供するサービスのことです。

ビジョンを噛み砕き、
要素に落とし込む際に「方法」を考える必要があります。
この「方法」というのは、
「アプリ」や「ウェブ」の「機能」とほぼ同義です。
「機能」を考えるということは、
下手をすると「サービス」全体まで考えなければいけない…
ということになるかもしれません。

先日の「Startup Meets Design」で、
元々鉄道車両のデザイナーの方がいらっしゃっていたのが印象的でした。
そのような方が今はウェブをデザインしています。
ウェブページやアプリのデザインを依頼され、
ボタンの位置や記事の配置等を考えるという、
コンサルティングのようなお仕事ですね。
その方もHTMLは書かないとおっしゃっていました。

ただその方の言葉で
「そもそものサービスを変えるような提案をするし、実際にひっくり返す」
というものがありました。
つまりは依頼者が考えた、
「ビジョン」を噛み砕いた末の「方法」が間違っていて、
デザイナーとしてそこに気づき、
「方法」を提案した
ということです。
そういった『強い「デザイナー」』、
つまり「プロダクトデザイナー」に、なりつつあるのです。

例に出した方は元々車両を作るというまさに
「プロダクトデザイナー」だったという事実は、
偶然でも言葉のあやでも無く、
本質的にはウェブのデザインもモノのデザインも変わらないということを
示唆しているように感じます。

「ユーザーエクスペリエンス(以後UX)」とは、
そのまま訳しただけっぽいですが
「利用者の経験・体験」ということです。

よく「ユーザーインタフェース(UI)」と並列して言われていますが、
こちらは「ユーザーが実際に触って機能を利用する時に使う操作部分」
という理解で良いと思います。
例えば「ボタン」や「検索窓」などが「インタフェース」です。

それぞれを「デザイン」することの意味ですが
▼ UI
ユーザーに『直感的』に「機能」を使わせるための
「操作部分」のデザイン


▼ UX
「操作」をし、「機能」を利用した末に、
ユーザーをどのように感じさせ、
どのように動かすか
というデザイン


つまり
『「UI」によって「UX」をデザインする』
ということです。
UIで人を動かし、理想的なUXをさせる。

今日私は「Visionary Summit」というイベントに参加し、
そこで「Titanium Mobile」というフレームワークのカンファレンスを聞きました。

この「Titanium Mobile」は、
「書き方次第では、容易にワンソースでiOSでもAndroidでも機能が実装される」
という特徴があります。

しかししきりに登壇者の増井さんが
「それぞれのOSのUXは考えなければいけない」
ということをおっしゃっていました。

例えばiOSではTwitterのタイムラインを更新するとき
「画面を下にスライドして引っ張る」or「更新ボタンをタップ」
という「UI」ですが
Androidでは、
「メニューを出して『再読み込み』をタップする」
という「UI」です。

もしアプリ内でツイートを更新する際に、
「Twitterをストレスなく更新させる」
というUXを実現しようとしたときに、
そもそもOSに備わっている「UI」が異なることがあるので、
機能は実装できるとはいえ、
同じ「UX」を実現するためにはOSごとに
「UI」のアプローチ方法が変わるので、
注意をして実装を考える必要がある…とのことでした。

この「Titanium Mobile」を提供している企業
Appcelerator Inc.」の本社は
まさにシリコンバレーにあります。

もうシリコンバレーでは
「UI」「UX」という概念・言葉は当たり前になっている
ということを指し示しているのではないでしょうか。

【でも別に新しい概念じゃなくない?】

ここまでのことを聞くと
「ユーザーの導線を考えるとか、当たり前じゃん。」
という人がいると思います。

僕も正直そう思います。
元々このようなプロダクトデザイナーの考え方は
20年ぐらい前から言われていた話です。

ものすごーく有名な本で、坂井とわ子さんも推薦していた本に
「誰のためのデザイン?」という本があります。

これは私の大学でも、デザイン系の授業では
必ずと言っていいほど教授が推薦していた本でした。

本の中で「アフォーダンス」という言葉が出てきます。
(以下Wikipediaから参照)


アフォーダンス(affordance)とは、環境が動物に対して与える「意味」のことである。

これは「デザイン」的に翻訳すると
人がインタフェース(環境)を見たときに、
直感的にどのような動きを想起させ(意味を与え)るか
と解釈できます。

まさにこれは「UI」「UX」に直結する話です。

このアフォーダンスという概念が1988年に提唱されていたというのは驚きですね。

「UI」という言葉は相当前から言われていて、
「UI」をデザインするデザイナーは多く居ると思います。
しかし、今後は「UX」までデザインする必要があると叫ばれるようになった…。

じゃあなんで今「UX」なのか。
なぜ「プロダクトデザイナー」なのか。

ここからは私の持論は
「ウェブの進化がサービスの作り方を変えてしまったから」
というものです。

ウェブの進化によって、以下のようなことが起きました。
  • 機能の複雑化
  • 事業の少人数化
  • コンテンツの大量化

① により、複雑な機能を直感的に操作ができるようにする必要がでてきました。
② により、一人で多くのことをする必要が出てきました。
③ により、他のコンテンツとの差別化が難しくなりました。

この①〜③の課題の解決方法が
「プロダクトデザイナー」だったのではないでしょうか。

【「プロダクトデザイナー」に必要なこと】

デザイナーでない自分が言うのはおこがましい、
釈迦に説法ということは重々承知ですが…
今後のデザイナーに必要なことは
「人を知る」
ということなのだな、と感じています。

自分が何ができるとか、イラレができるとか、HTMLかけるとか
そういうことが一番大事なのではなく、
「人を知り、人がどう考え、人がどう動くかを考え尽くす」
ということに尽きます。

上杉さんが講演中にライブコーディングを行いました。
プログラミングのオープンなプロジェクトをフォローする
「github.com」というSNSを
効率よく見るためのアプリを作成しました。

そのときのUIを変えるときの理由を以下に羅列します。
ユーザーは一番得意な言語を使うはず。
→JS(得意な言語)のみデフォルトで表示
2000人以上のフォロワーがあるプロジェクトは有名だが、
200以下は使い道がないため、
200~2000以上がユーザーに取って有用なプロジェクトなので
→デフォルトで200~2000のプロジェクトを表示
ユーザーにとって名前よりプロジェクトの説明のほうが価値がある。
→表示するときに見やすいように左揃えにする

そう、すべて「ユーザー」が理由なんです。

【結論】
まとめると
  • 今シリコンバレーではプロダクトデザイナーが熱い
  • UIだけではなくUXも考える必要がある
  • デザインを学ぶとは、人を知ること
ということです。

以上、自分の解釈等のまとめでした。
異論、反論、賛成意見 待ってます!

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